ポアトゥー・サントンジュ地方ににいまなお多数現存する聖堂建築のファサード、柱頭などには様々な彫刻が施されている。質量共に大きな位置を占めるのは当然ながら聖書の記述に基づいたものであるが、細かな部分に見られる動物、植物、その他の彫刻については東方、ケルト、その土地の古来のもの等が起源とされている。
ポアチエのノートル・ダム・ラ・グランド教会のファサードを例にとると、聖書の記述を図像化したモニュメンタルな彫刻の隙間を埋めるかのように種々のモティーフの彫刻が見られる。これらをみているとまるで埋まっていた化石が岩壁に露出しているように思われてくる(図1)。
図1:ファサード彫刻から、巻貝の化石のよう |
図2:三葉虫を思わせるような彫刻。これはシャルトルの彫刻であるが同様の例をポアトゥーでも見た |
太古の恐竜の骨は現存の動物からは想像出来ないような大きなものが多く(大型恐竜の大腿骨などは2m以上もある)、中世においてこれらが偶然見つかるとそれらをドラゴンや巨人に帰属する(聖書にも記述があるではないか)のは当時の常識的な発想からいけばごく自然な帰結であるように思われる。
化石の多産地と彫刻のモティーフには何か関係があるかもしれないと思うものの、今のところデータが不足している。もう一つそう思えるような理由として化石を含まない火成岩系土壌であるマリア・ラーハにはこのような彫刻は見られない、ということもある。同じ火成岩系であるオーベルーニュ地方はどうであろうか。
ポアチエのノートル・ダム・ラ・グランド教会から、ヒトデのような装飾彫刻 |
Refference 2) Sur la presence du genre Haurania Henson, dans le Lias Inferieur de la region de Saint-Maixent, poitou, France.
1) Stratigraphie sequentielle des series du Bajocien inferieur an Bathonien moyen du seuil du Poitou et de son versant aquitain(France).
C. Gonnin, E. Cariou, P. Branger, C R Acad. Sci. Ser. 2b, 316(2), 206, 1993.
P. A. Baloge, Rev. Micropaleontol., 24(3), 127, 1981.