ザンクト・キリアン大聖堂とノイミュンスター
Münster Sankt Kirian und Neumuenster, Würzburg


 バイエルン州北部の町ヴュルツブルクはロマンティーク街道の出発点、リーメンシュナイダーが市長を勤め、ヴァーグナーが音楽家としての職歴をスタートさせた場所、フランケンワインの産地として知られる。ザルツブルクのような強大な勢力を持つ司教領で、二つの大聖堂、司教宮殿(レジデンツ)、マリーエンブルク要塞は全て歴代の大司教により造営されたものである。
 ザンクト・キリアン大聖堂はこの地で殉教したキリアン(『ポーの一族』のキリアン・ブルスウィッグは今どうしているのだろうか)に捧げられた。外部はリーメンシュナイダーの作品と同じくマイン産の砂岩を素材としている。


アプシス

 西側は巨大な壁のような正面とすらりとした二つの塔が威圧的であり、シュトラスブルク大聖堂から彫刻と立体物がつくる陰影を除けば似ているかもしれない。後陣部分は簡潔でドイツ人の好きなツヴェルクギャラリーもない。東側の塔は逆に装飾が多く、ここから近いバンベルク大聖堂に似て末期ロマネスクである。
 内部はバロック化されていて、内壁は細かなストゥッコ装飾で埋め尽くされているが、ピンクがかった色でとても暖かなトーンを作り出している。これはミュンヘンのテアツィーナ教会の寒々としたストゥッコ装飾(シャドゥを黒で強調し、さながら日本の墓地のゼニ苔を思わせた)と対照的であった。シュパイアー大聖堂ザンクト・マリア・イム・カピトールに次ぐのではないかと思うほど広いクリュプタがある。

ノイミュンスター
Nümünster


 ザンクト・キリアン大聖堂のすぐ隣にあるノイミュンスターは12世紀に建てられたが、完全にバロックの表皮に覆われ面影はない。唯一雰囲気のある場所は回廊であるがこれも13世紀である。「教会」という言葉は本来特定の建物だけを指すのではなく、教区の信者まで含めた共同体を指すのであるからここも教会の一部には変わりない。この回廊の下にヴァルター・フォン・シュトルツィングの師匠だったミンネゼンガー、ヴァルター・フォン・フォーゲルヴァイデが眠っている。


Deutschromanik  Romanesque
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