フェルメールと音楽


 フェルメールの作品には音楽を題材としたもの(演奏や楽器など)が多い。楽器が描かれている作品として『取り持ち女』(撥弦楽器らしいが柄だけなので不明)、『紳士とワインを飲む女』、『デルフトの眺望』、『音楽の稽古』、『合奏』、『絵画芸術の寓意』、『ヴァージナルの前に立つ女』、『恋文』、『手紙を書く少女』、『ギターを弾く少女』、『ヴァージナルの前に座る少女』、『リュートを調弦する少女』、『中断された音楽の稽古』があり、かつて楽器が描かれていた作品に『真珠の首飾り』(画家本人により削除)、『中断された音楽の稽古』(壁にヴァイオリンが描かれていたが後世の補彩により消された)がある(『フルートを持つ娘』は真作ではないので除外)。演奏風景や楽器が登場するのは当時のオランダ絵画の傾向でもあるが、フェルメールの作品では13点あり、制作作品数が40前後であることを考えると、特に音楽に関心が強かったのではないかと思える。フェルメールの作品に登場する同時代の楽器を集めてみた。カリヨンを除く楽器はブリュッセルの楽器博物館のコレクションである。

カリヨン

 これまで出た全ての研究書が落としていた最大の楽器で新教会の鐘楼である。CDのところで書いたように、フェルメール存命時には18個の鐘が設置されていた。現在は48個。

ヴァージナル

 『音楽の稽古』に描かれているこの楽器は「ドルフィン」模様からアントヴェルペンのリュッカース工房が製作した楽器であることがわかる。当時既にリュッカース工房の作品は「鍵盤楽器のストラディバリウス」と呼ばれていた。チェンバロなども含めて100台が現存、うち3台がブリュッセルの楽器博物館にある。

ヴァージナル

 こちらも同じリュッカース工房によるヴァージナルであるが、小型で鍵盤が左よりになっている。ヴァージナルはテーブルに乗りそうな小型なものから『音楽の稽古』に描かれている2m近い大型のものまで様々な大きさのものがあり、鍵盤が二段になったものや中にはチェンバロと合体した種類もある。

リュート

 損傷の激しい『リュートを調弦する女』などに登場する。この画像はそれより少し大きいアルト・リュートと呼ばれるもの。形態や音域などの違いにより種類が多い。なお、名古屋と東京で公開された『恋文』の楽器はマンドリンの仲間ではないかと思う。

ギター

 後期とされる『ギターを弾く少女』に描かれている楽器。手前がヴィーンのMatteo Sellas製作で17世紀初期、後ろがジェノヴァのGiorgio Jungmannの1633年に製作したギター。大きさは現在の普通のギターよりふたまわりほど小さく形も少し違う。

 この他に登場する楽器としてヴィオラ・ダ・ガンバ、コントラバス、トランペット(『絵画芸術の寓意』でトロンボーンに見えるがトランペット)、チェンバロ、楽譜がある。また、画中画として描かれたコントラバスなどがある。

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