Sint-Truiden, Liege, Belgium.


シント・トルィデンとご近所

 ベルギーの果物、というより「洋梨の里」(勝手につけた)はブリュッセルとリエージュのちょうど中間にあり、ブリュッセルからは鉄道で50分くらいである。トゥルネィからナミュール、リエージュ経由で洋梨の里に着く。ちょうど滞在をはさんだ前後の日曜日が「フェスティバル」で、マルクト広場も舞台や観客席が用意され、夜になるとリハーサルも行われていたりした。小さな町でここに滞在したのは何と言っても洋梨があるため。旅行の時期を9月にしたのも一つには洋梨の実がたくさんなっているのをあてにしてのことである。お天気次第で自転車を借りて果物地帯を一回りする予定。このあたりも大雨のため水没したところがあるけれども、町中は心配なく、郊外に出て運河や川に近いところで水没した畑などがあった。
 小さな町ながら、博物館や美術館はいくつもあり、中心にある教会はゴシック、隣の市庁舎はルネサンス建築である。修道院から発展した町であるので元及び現修道院がいくつもある。
 シント・トルィデンを中心とするこの地域は”Haspengowv”と呼ばれ、ベルギー有数の果物地帯である。日本の山形県か長野県のような所か。リエージュからシント・トルィデンに向かう時も見える風景は最初、牧草地帯だったのがだんだんと果樹が多くなり、最後には果樹の森のような様相を呈した。町では観光地として売り出しているものの、ブルージュやゲントなど国際的な観光地に比べるとかなり負けていて、そういった町の人にシント・トルィデンに滞在する、というと必ず???という顔をされる。洋梨が好きだから、というとはじめて納得してくれ、あそこは果物の産地でおいしいから、と説明してくれる。
 右写真はマルクト広場へ向かう道。左の塔がSint Pieterskerkで入口がちょっとだけロマネスク、大部分がゴシックの単塔型聖堂である。


大修道院(現在は廃墟)

 シント・トルィデン(フランス名サン・トロン)という聖人が9世紀にここに修道院を設立したことから発展した町である。ライン−ムーズ河畔初期ロマネスクの重要な遺構で、ロマネスク時代には全長100mの身廊を持つ聖堂があり、西正面には巨大な塔が建っていた。因みに100mという大きさはヴォルムスやマインツなどドイツの帝国大聖堂に匹敵する。聖堂の柱はわざわざライン地方から運ばれたことがわかっている。現在はロマネスクの塔、ルネサンス式の門、バロックの修道院長館などが残るのみ、最近に至るまでまで不運続きで80年代にも敷地内での爆発事故があり、残存部分もかなり損傷している。広大な敷地は大部分が学校(ちょうど身廊のあった位置に校舎がある)になっていて、このほかに農業博物館(期待したけれども洋梨関係の展示なし)と修道院資料館(兼郷土資料館)がある。写真左が修道院聖堂の塔、右が最盛期の修道院想像図(市の観光パンフレットから)。


ご近所、Zoutleuw

 シント・トルィデンから西へ5kmのところ、ミシュランのガイドに少し出ているZoutleuwは小さな村で交通手段は車しかない。ここに13世紀の聖堂があるのでサイクリングの目的地にした。シント・トルィデン市庁舎内にある観光案内所で自転車を借り、Zoutleuwへの行き方を教えてもらい、地図のコピーも頂いた。お天気は最高に良く、朝9時半に市庁舎を出発、5キロならすぐ着いてしまうので洋梨林をあちこちまわる道草だらけの道行となった。城壁跡(現在は道路)を出たところにラインラント風ロマネスク聖堂を発見、とても小さいのにちゃんとアプシスにはツヴェルクギャラリーを巡らしている。
 やがて果樹園地帯に入る。圧倒的に林檎が多い。日本でも果樹地帯をみたことがあるけれどもこれほどの量ではない。一つの木も何となく日本のものより実が多いような気がする。期待の洋梨地帯も見つかった。比率にして5:1くらい、林檎と洋梨は混在しないではっきり分けてあるようである。お天気も良く洋梨林の中自転車で駆け抜けるのは洋梨好きにとって天国とも言える場所である。
 たいへんな回り道をしながらのサイクリングは目的地へ着いたのがようやくお昼前、普通に行って5キロのところを20キロは走り回ったようである。聖堂向かいのレストランでチーズとソーセージ入りオムレツをお昼にする(とても美味)。カウンターが年代物で大切にしているようである。お昼の後、聖堂へ。
 Sint-Leonardskerkは写真のように珍しく2塔型でかなり寸詰まりである。プランを見ると最初は小さいながらも均整のとれた形であるのに、側廊に祭室を追加していくうちにプロポーションが崩れてしまった、という感じである。外側は色の違う石でアクセントをつけている。全周にわたって修復工事のための足場がかけられている。内部はお昼時のため入ることが出来ず、お天気も少し怪しくなってきたのでそのまま引き返すことにした。



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