ルドンを巡る音楽家 10

ローベルト・シューマン Robert Schumann

 「彼自身が高貴だった。その意味は、絶対に利己的でなく、自己を棄てた心の流露、強く充足した魂を持っていたということである。シューマンは、彼の果実を与えた。林檎の樹が林檎を与えるように、自己本位の思いもなく、悔いもなく、彼の心臓と思想、彼の作品と彼の一生を、他人の苦しみを自分のものにする人々と同じように、与えた。それこそ最高の恩寵であり、深い天才の性格のしるしである」(1915年の手記)


 ルドンは揺篭のなかで(音楽の神童だった兄の演奏する)シューマンの作品を聴いて育ち、生涯愛好していた。何度か肖像を描いていて、はやいものでは20代のもの、次いでパステルの『シューマン讃』、総決算ともいえるフォンフロワドの壁画『夜』(「音楽は夜の芸術である」とルドンは言っていた)のパネルにもオマージュとも言うべき肖像を描き込んでいる。


Cat. Raisonne No. 2500, 163, 2557

 同時代の画家フェルナン・クノップフの『シューマンを聴きながら』では、クノップフはピアノの傍らで聴き入っている女性(画家の母親)の額に手をあてた内省的な様子からシューマンの音楽の精神性を示唆するが、ルドンはもっと霊的で夢的な次元としてとらえた。


Fernand Khnopff, En ecoutant du Schumann, 1883, Musees royaux des Beaux-Arts de Belgique

 親友だったショーソンによると、ルドンはわざわざスイスに滞在中のブラームスに会いに行ったことがあるという。ブラームスのことよりも、生前のシューマンのことを尋ねたかったのかもしれない。


シューマンの墓碑(Bonn)、墓碑銘にはGrosse Tondichterと記されている。


Google mapでみるボン中央墓地にあるシューマンの墓碑(中央)

シューマンのCD
数多い録音からルドンと関係が深いもの

タイトル Alfred Cortot The Schumann Recordings
演奏 Alfred Cortot
録音場所、年代 Paris, 1929-1931..
CD No. TELARC CD-80645
 コルトーはセヴラックの友人でフランスのピアノ音楽の中で最も高く評価していた。ドイツ音楽に傾倒し、とりわけシューマンを得意とした。ルドンと親しかったかどうかわからないが、コルトー、セヴラック(『休暇の日々から』の第1曲は『シューマンへの祈り』と題されていた)、ルドンの3人の間でシューマンに関して共有するものがあったように感じられる。『クライスレリアーナ』は数多い同曲の録音のなかでも特に優れた演奏の一つ。

Redon et musique

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