Aliens romanesque
最悪の生き物たち

 肩から二つの頭が生え、しっぽに顎がある(この彫刻のある南チロルの隣グラウビュンデン州(中世までチロル領であったが後にスイスへ割譲された)出身のギーガーが描いたデッサンを想起させる)姿からして既に「最悪の生き物」化している。それ以上に幻覚をみているような模様のインパクトが強い。これで『ベアトゥス』風の極彩色が施されていたらどうなっていたことか。少なくともこのしっぽには食べられたくない。

 チロルに棲む生き物に対抗できそうなのがいちごの里に今もいる。蛇のような胴体を喰い破って現れた二匹の生き物が啀みあう神の秩序から最も離れたまさに混沌の世界。それぞれ手にするのは棍棒でなくて蛇。しっぽの自己主張がとても強くカンブリア時代のハルキゲニアのようにどちらが頭かわからない。


 上の長い生き物と相対しているのがこの多頭の生き物。直接には『黙示録』に登場する「七つの頭と十の角を持つ生き物」であるが、写本に描かれていたときよりも格段に不気味なリアリティーを増している。


彫刻というよりも建物の基礎から出てきて石化したような生き物。曲線がとても不気味。


この、ぬめぬめしさ! 上の生き物を手本に気味悪さ徹底的に追及していった、と思える彫刻。


ぬめぬめしさでは負けていない


  

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