ライヒェナウのマリーエン修道院長であったヴァラフリート・ストラボの作品にHortlus(『小さなハーブ園』)という詩集がある。修道院のハーブ園に植えられた様々な植物たちを讃えた、この時代としては珍しい小品である。ヴァラフリート・ストラボより少し前の修道院長ハイトー二世の時代に制作され現在ザンクト・ガレン図書館所蔵の『ザンクト・ガレンのプランにはその左上に小さくハーブ園も記載されている。


ザンクト・ガレンのプラン』全体図、いちばん左上に薬草園


同図から薬草園の部分

 ハーブ園を示す部分には植物名が記入され、それらのうちの一部は『ホルトルス』にも登場している。この二つの資料をもとに、マリーエン修道院の南側敷地にハーブ園が復元された。同じハーブ園がロルシュにも復元されていたがこちらはつい見に行くのを忘れてしまった(とても暑かったのでつい)。


復元されたハーブ園

ハーブ園のハーブ
Papaverケシ
Liliumユリ
Abrotanumヨモギ
Mentaミント
Cucurbitaヒョウタン
Peponesメロン
Salviaサルヴィア
Rutaヘンルーダ
Gladiolaグラジオラス染料として用いられた
Puleqiumポレイミントミントの一種
Absinthiumニガヨモギアブサン酒の原料、『黙示録』にも登場
Marrubiumマルビウム
Rosaバラ修道院長のお気に入り、十字軍以前のバラは野薔薇に近い
Rafanumダイコン
Nepetaイヌハッカミントの一種
Ambrosiaアンブロジアキク科ブタクサ属、日本には帰化植物のみ。「神の植物」の意味であるがブタクサのギャップは大きい
Agrimoniaキンミズヒキバラ科キンミズヒキ属
Vettonicaイヌゴマ
Cerefoliumシャク漢方でいう芍薬
Apiumセロリまたはパセリセロリは苦手
Lybisticumウド放っておくと大木化する
Feniculumウイキョウ漢方でも用いられる茴香
Costusミルラ没薬
Sclaregaオニサルヴィアスクラレア


ハーブ園の植物から

 テレビドラマシリーズにもなった『修道士カドフェル』の主人公はシュルーズベリ修道院内にあるハーブ園の管理を任され、東方から持ち帰った(当時のイングランドでは)珍しい植物を育て、食用や薬用としていた。修道院にはたいていハーブ園があったようでこの時代の記録ではヒルデガルト・フォン・ビンゲンのものがよく知られている。『薔薇の名前』のベネディクト会修道院でも薬草に詳しい修道士がいた。これらの植物は薬用であるばかりでなく染料として写本や壁画の画材に用いられた。

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