Schola Augigensis/ von Reichenauer Schule


 …後年にザンクト・ガレンで、これと同じぐらいの規模をもった、文書庫とは別になっている写字室を(他の土地の場合には蔵書が置かれているのと同じ広間で修道僧たちが仕事をしていた)みたことがあった(『薔薇の名前』上、p120)

 ミッテルツェルのマリーエン修道院で制作され、ザンクト・ガレン修道院に贈られた、今日『ザンクト・ガレンのプラン』として知られる修道院平面図から写字室と文書庫の部分(アプシス左側)。最も神聖なアプシスのすぐ左側にある部屋は二階建てで上が文書庫、下が写字室と記されている。このプランで示されている写字室と文書庫の規模は当時として異例の大きさであった(現実のものではないかもしれないが9世紀のザンクト・ガレン修道院は約400冊の写本を所蔵していたことが当時の蔵書目録から確認されている)。普通の修道院は多くても数冊程度の所蔵数であった。ライヒェナウでは9世紀に400冊、10世紀に500冊所蔵されていた。


ペンを握っているのは三本の指だが、全身で働いているのだ。そして全身で苦しんでいるのだ。
『薔薇の名前』(上、p204)

 シトー会修道士であったハイスターバッハのカエサリウスは救済された罪深い修道士について記録している。死後その修道士は生涯犯した罪の数から写本に記した文字の数を差し引いたところ、最後に一文字だけ残り救われた。また、タルコフスキーの『アンドレイ・ルブーリョフ』の中で、一度修道院を棄てた修道士が再び修道院に迎え入れられる条件として「聖書を10回書き写せ」と命じられ絶句する場面があった。カロリング時代に小文字が発明され格段に記し易くなったものの写字、挿画は重労働であった。

ライヒェナウ派の写本
Reichenau Heimatmuseumで展示されたファクシミリを中心に

ライヒェナウ派による「皇帝写本」(皇帝や側近らにより制作を依頼された写本)
写本名制作年代現在の所蔵元、番号
Gero-Codex965 - 976Darmstadt, Hess. Landesbibliothek Codex 1948
Egbert Codex977 - 993Trier, Stadtbibliothek Cod. 24
Egbert - Psalterca. 980Cividale, Museo Archeologico Nazionale Ms.136
Evangeliaire de Poussayca. 980Paris, Bibliotheque nationale de France Ms. lat. 10514
Aachener Ottonenevangeliar996Aachen Domschatz Inv. ohne Nr.
Das Evangeliar Kaiser Ottos III.1000München, Bayrische Staatsbibliothek clm 4453
Hohes Lied, Sprüche Salomonis und Buch Daniel mit Glossenum 1000Staatsbibliothek Bamberg Msc. Bibl. 22
Evangeliar aus dem Bamberger Dom1001/1020München, Bayrische Staatsbibliothek clm 4454
Bamberger Apokalypse und Evangelistarum 1001 - 1020Staatsbibliothek Bamberg Msc. Bibl. 140
Perikopenbuch Kaiser Heinrichs II1007 - 1012München, Bayrische Staatsbibliothek clm 4452

 マリーエン修道院において、カロリング時代はもっぱら文芸に活動の中心が置かれていたのに対し、オットー朝時代は写本挿画に力を入れていたようにみえる。マリーエン修道院の写本工房を中心としたライヒェナウ派は980〜1020年頃に最も優れた作品を制作した。カロリング時代の装飾写本は現存していないがザンクト・ガレンと異なり、あまり制作されなかったようである。ライヒェナウ派は突然のように現れ、1060年を過ぎると急速に衰退していった。現在この時期に制作された40の装飾写本がヨーロッパ各地に伝わるがライヒェナウ島には一点ものこされていない。これらのうち上表の10写本が「皇帝写本」であり、そのうちの5写本はオットー三世の依頼により制作された。挿画のための画材については「技法書」に詳しく記載されている。

『オットー三世の福音書』、1000年 『ハインリヒ二世の典礼用福音書抄本』、1017-1012年


『エグベルトの福音書』


『バンベルクの黙示録』


『ライヒェナウ派の聖句集』(または『ヴォルフェンビュッテルの聖書』、10世紀末)
Lektionar der Reichenauer Schule, Wolfenbüttel, Herzog August Bibliothek, Cod. guelf. 84, 5 Aug. 2


Epistolar und Orationale, um. 1020, Hildesheim


『ミュンスターシャッツカンマーの福音書』, Texte 9Jh, Bilder 11Jh.)


『年間朗読用福音書』(980年頃)
Evangelistario
Roma Bibliotheca Apostolica Vaticana, Bar. Lat. 711, fol. 13v.
この写本は2002年に印刷博物館で開催された「ヴァチカン教皇庁図書館展」で公開・展示された。
「皇帝写本」の系列ではなくリウタール派以外の画家による。

Insel Reichenau   Marienmünster in Mittelzell   Wandmalerai in Sankt Georg   De Diversis Artibus
        

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